<LOTTI>と沖縄についての、いくつかの記憶


先日のエントリで話題にした新城賢一さんのアンビエントソロアルバム『Endless, Endless, Summer』ならびにcomcomの『COLOR PAINT』を<New Masterpiece>から再発しました。ともに初リリース時は2008〜2009年と干支を軽く一回りしてしまったのですが、今聴いても耐えられる、特に新城さんソロに関してはむしろ今しっくりくる強度の作品だと思います。今回のエントリは沖縄の彼ら周辺の話を。


現在までレギュラー開催を続けているJ-POPオンリーDJパーティーとしては かの『申し訳ないと』を凌ぎ日本最長となった沖縄の『ARAKEMO。』(初期は『嵐の獣。』)、その中心人物・夜野一義さんが同時期に展開していたエレクトロニカCDRレーベルが<LOTTI>だった。私hitachtronicsと夜野さんは2000年あたり、<Transonic Records(現ExT Recordings)>の非公式ファン掲示板の常連だった事から交流が始まり、当時ゲームボーイの作曲ソフト『nanoloop』が流通、夜野さんはけっこう早い時期にこのnanoloopを入手しており、当時のHNだった”座久拓郎”名義でCDRを出し、そのジャケを私が担当、これが<LOTTI>の1番になった。
ちなみにロッチの由来はお笑い芸人ではなく、ビックリマンシールが大人気だった頃に出回った海賊品の通称からつけられている(というか、おそらくお笑い芸人のロッチも同じ由来だろう)。

座久拓郎/ひとつめのはじまり(2007)

以前のエントリと重複するが、2007年に座久のフル1stプレスCD『ひとつめのはじまり』のジャケイラストを手がけさせてもらい、さらに翌年私の創作同人漫画のサントラコンピ『BLICK IMAGE LIMITED』を企画した際、<Commune Disc>やまだ無名だった<Maltine Records>と合わせて<LOTTI>もお誘いし、座久、saluki and afghan、SUBMARINEの新城さん、そしてcomcomに参加してもらった。さらにその翌春、<LOTTI>が不定期に開催していたライブイベント『強制スクロール』に出演者として呼んでもらい、人生初の沖縄旅行になった。
当時沖縄のクラブといえばレゲエが主流だったようだが、当時まだ勢いがよかったエレクトロニカを根強く愛好する者によって独特なシーンが形成されており、小さいながらも熱気がありアットホームな雰囲気だった。今回の再発に関して、ジャケを新装する必要があったので何か無いかとHDDを探っていたら当日の写真が残っていたので、写真だけでもこの雰囲気をご想像してみてお楽しみください。会場の8onpasももう無いそうです。

<LOTTI>は2009年までに19作品と、ミックス部門のサブレーベル<mixb>から8作発表、CDRは沖縄のインディーを扱う数店舗やに卸されていたが、2010年代以降はbandcampやサブスクなどの隆盛が関係しているのかどうか、その活動もフェイドアウトしていったようだ。

旅行中ふと気づいた事があって夜野さんに聞いた。「沖縄のご飯でチェーン店は無いんです?」と。
ハンバーガーチェーンのA&W(通称エンダー)は有名だが海外出資なので例外としても、タコライスの老舗チェーン店“キングタコス(通称キンタコ)”は当時3店舗ぐらいしかなく、その店構えも開店当初の古びたままで”キングターコス””キングターコース”など、ロゴどころか店名表記すら統一されていなかった記憶がある。あと、沖縄そばも名店舗はあるが、基本チェーン店になっていなかった。どうやらもっと店舗を増やして大きくしよう、改装し小綺麗にして観光客にアピールしよう、という野望が、少なくとも当時の経営者側には無かったようなのだ。ソウルフードとして年長から若者まで地元民に十分愛されているし、今まで売上が落ちる事がさほど無く、観光客などの新規を増やす必要が無かったからだろう。
もっとも、これも10年以上前の話。キンタコに関しては現在は小ざっぱりし、店舗もかなり増えているようだ。

comcomをはじめ<LOTTI>のミュージシャン達も(例えば京都の人達のように)面白い音楽を制作していたものの、内地では話題に挙げている人物が虹釜さんと<Commune Disc>のSuzukiiiiiぐらいしかいなかったのが不思議でならなかったが、前例に出したお店の事を考えると、よく言えばマイペースかつ出世欲の無さというか、土地柄で全部一緒くたにするのは問題あるかもしれないけど…。

ただ、思い返すもこの沖縄旅行(と、2011年の京都旅行)が後の<New Masterpiece>の活動の指針のひとつになっていて、実際、レーベルを立ち上げた際に前提としていたリリース候補は沖縄で会ったヘントナー大佐と京都で会ったtanaka scatだったし、もっと言えば前述の<Transonic Records>非公式ファンサイトの管理人も沖縄出身者で、去年末にTokyo Kabuki Boys名義で<NewMasterpiece>からアルバムを出した。

で、同じく先日のエントリで話題にしたBomachieca(comcomの大宜味さんが率いるポストロックバンド)から件の1stアルバムが届いた。感想を書いてこのエントリを締めくくりたかったんだけど、長くなっちゃったのでまた後日!

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