Body Has No Head/Unmanned Vehicle

ukレーベルchocolatemonkの287番。このレーベルは500番台は軽くいっていてコレクターは大変。過去作を検索しても情報が出てこなく何者か不明。ただバンキャン漁れば音源は聴ける。

https://codybrant.bandcamp.com/album/unmanned-vehicle

no neck blues bandと対バンしてほしい名前のユニット。chocolatemonkらしい、くちゃぷにょなセッションで出音のバリエーション、加工、溶け具合がカッコいい。緊迫感のあるタイトでシリアスな電子ドローン作品と交互に聴くことで耳の温冷交代浴をしよう。

martin rev/clouds of glory

低気圧に縮こまって発痛した脳に何を処方してやろうかとこのジャケにピンときてlos apsonで購入、再生。ダクトから漏れ出る工業排気を強迫的なリズムとコードの繰り返しでくぐり抜けると3曲目は「whisper」という曲に出逢う。David lynchのハリウッド懐古的良心に触れるような、ダンスホールに集うラヴァーズのゆらめきと郷愁の凝固体に、イメージ上のアメリカ人の自分が、50年代を想うのです、真夜中の深海パーティで踊っていたあの時を。そして次の曲で再び作業服を着て工業地帯を駆け回るのです。

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Tori Kudo and Rick Potts / Ka-Bella-Binsky-Bungo!

2011年、kayo makinoが主宰していた東京のレーベル dependent direct sales (DDS) から150部限定で出版された工藤冬里とリック・ポッツのデュオによるCDRアルバム。その仕様はとてもじゃないけど一筋縄で収まるものではなく、LAFMSの創設メンバーでありイラストレーターでもあるリック・ポッツによるイラストが盤面にプリントされたCDRのほか両アーティストそれぞれが書いた作品についてのテキスト、お互いのことを記しあった濃厚なライナーノーツ、そして、陶芸家でもある工藤冬里にまつわるブツや、作品や作家と脈絡があったりまったくなかったりするチラシやポストカード(私が所有するものには“劇団そぞら群”の古いチラシも……知らんけど)が黄封筒にごっそり封入された一点もので、まるでダダ〜フルクサスらを源流とするメールアートのような意匠があり、自宅に届けられたときにはひどく興奮したものだ(郵送のみで手渡しの販売はしていなかったと記憶する)。


リック・ポッツが「ナンセンスマントラ」と呼ぶその内容は、ときにヒリヒリときにマッタリ、ときにコミカルときにリズミカル、ときにシリアスときにベラボウ、ときにシュールときにユーモラス、ときにパンクときにサイケに……両者が発する音という音がこもごも入り乱れてじつに風味のあるアヴァンギャルドを展開する。フェンダーローズを片手にマックの音声再生ソフトを駆使して不可思議な言葉を並べ倒す工藤冬里。可能な限りのモノや楽器を使い、民族的アプローチで自発的な音を鳴らすリック・ポッツ。その奇天烈すぎる音の交感はまるで最初期のハーフ・ジャパニーズ、はたまたパズルパンクスに頭をガツンとやられたときのような衝撃をともない、言語コミュニケーションのはるか彼方で自由に漂い遊ぶ秘境のお遊戯にばったり遭遇したような目撃感がある。捕まえようにも脇の下をするりとすり抜ける音・オト・おとの不思議大百科。変てこりんでかっこ良い。これ最高である。


同年、(いまはなき)六本木スーパーデラックスにてこのデュオによるライヴが開催された。リック・ポッツが使用していたのは、サンプラー、ガラクタ、笑い袋など音が出るさまざまなおもちゃから、ネックが途中でべこんと折れ曲がり、だら〜〜んとたわんだ弦の響きが横山ホットブラザーズのノコギリ芸ばりに時空をすっとこどっこいに歪ませる「ちょうつがい首ギター」ほかもろもろのもろもろ。工藤冬里はギターやピアノをメインに音を出しつつ、いろんな角度とタイミングで椅子の足をフロアに擦りつけて「ギギギィーー」と引きづり回して攻撃的な軋みを発するなど異様な緊張感と心地良いトリップ感を醸し出していたのを昨日のように思い出す。最底辺にして最高峰の騒音。徹底的な「ノー!」から産まれる意味をもたない、つくらない、もちこませない音楽。肩から耳に息を吹きかけられるように生々しくも混じり気のない音の連続に、いつしか音楽からはぎ取られていた原石を見たような気がした。


余談になるが、水木しげるから多くの影響を受けていたというリック・ポッツ。その奇妙な佇まいが「足長手長」のように見えたのは私だけでしょうか?

Rick potts/KASPER

アメリカ全土を襲った嵐「トーティア」の影響で遊園地の電気系統は接触不良を起こしているようで各アトラクションはブツブツと途切れ途切れのBGMを垂れ流しながら痙攣気味の挙動をしている。こんな田舎の遊園地に日本人が居るのが珍しいのか、ただ暇を持て余していたのかアイスクリーム屋の店員が声をかけてきた。どうやらここの遊園地は気怠るい感じで商売っけもなく、年に数回しか稼働しないアトラクションもあるとのこと。話ついでにチョコミントのアイスクリームを買ったが恐ろしいほど安かった。これは鳩の餌を買う感覚に近い。

カートゥン風に描かれた動物が笑顔振り撒いているティーカップが情緒不安定に目の前で回転している。乗客は眠っているように頭を垂れて誰も動いていない。「これ本当に乗っていいんですか?」と初老の係員に聞いても拙い英語が通じてないのか、それとも聞こえないフリをしているのか、笑顔が張り付いたままである。俺はここに何しに来たんだっけ?

BGMはいつのまにか途切れ途切れというよりはいつのまにか妙なエフェクトを挟んだようなシェーク状のビートが流れている。スピーカーのコーンが割れているようだ。いつのまにかティーカップは停止していて乗客の姿は無い。係員は機械のように僕を案内しティーカップへ乗せる。ベルトというには心許なさすぎるビニール紐はだいぶ日焼けしていて締めようとしたところ手の中でホロホロになってしまった。ビニールに印刷されていたトーテムポールの頭と目が合う。

ティーカップが軋みながら45度斜め上めがけて回転を始める。周囲を見渡たし遊園地の全景がを確認する。暮れ時で皆帰り支度を始めているように思えたがしっかり目で追えない。そのまま2,3周するとティーカップは地面水平の角度に変わり始めている。突然猛烈な眠気に襲われ始める。握ったままのアイスクリームが気になるがこのまま回転に逆らわず眠気に身を任せてみるのが良いと思った。