Michèle Bokanowski/Trois chambres d’inquiétudes 1976

胡乱ミュージックシリーズ、やります。胡乱(うろん)正体の怪しく疑わしいこと。また、そのさま。「胡乱な者がうろついている」。確かでないこと。真実かどうか疑わしいこと。また、そのさま。

まずシリーズ第一弾は本作、Michèle Bokanowski。今日ユニオンでこのCD見かけてこのアルバム好きなんだよなーと手を取ったらPatrick Bokanowskiのパートナーと書いてあって驚いた、そりゃ好きだわ、というかこのアルバムMichèle Bokanowskiだったんかい。好きなアルバムでもアーティストなんも気にせず聴いちゃったりすることあります。なのでじゃあ本作からやろうと。彼女はピエール・シェフェール設立のORTF(フランス放送協会)という国営テレビ・ラジオ局に所属し、かつEliane Radigueから電子音楽を学んでます。製作は1975〜1976年。

[第一トラック]湿度高めなホワイトノイズ(聴けばわかる)にループされる楽器音を突然弦楽器音にカットアップ、しかしリズム感は維持しつつ、急に赤ちゃんの笑い声とテクノとしか形容出来ない四つ打ちがインサートされ、中盤でそのキックのリズムが吐息とオモチャの音にディゾルブで切り替わる。プレテクノとかいう前にミニマルテクノ然とし過ぎていて時代感が分からなくなる。曲のぶった切り方とループというリズム感がパートナーであるPatrick Bokanowskiと作ったL’Angeそのもの。

[第二トラック]何か山奥の施設をエレベーターで延々上がってるんだか下がってるんだから分からない。そして横でデカイ獣がエレベーターの機械音に合わせて呼吸をしてるんです。その呼吸でエレベーターが湿ってます。獣は9分くらいして居なるもののエレベーターは突然不穏な音を上げ始める。こういう表現の仕方は例えばMVが出始めた頃に音楽の想像力を奪った、という言説が出たことと同じような指摘があるかもと思いました。音のイメージの焦点を一つの風景に固定してしまう。ただこのテキスト読んでこの音楽聴いて同じ像が結べるのかなとも思うので、単一の映像に還元仕切っている訳ではないのかなとか。

[第三トラック]短い発声をリズムパターンとして使用、そこにまたエレベーターが駆動する。短い発声をリズムパターン化する技法はターミネーター2の企業社長が爆死するシーンで使われており、あれば呼気を爆弾の時限リミットのカウントダウンとして変容させている。本作では発声が機械の点滅パターンの様に無機質化されているが確かに人間だった手触りはある。

本アルバムを含めたお得盤https://tracelabel.bandcamp.com/album/mich-le-bokanowski

上記アルバムに収録されている4曲目tabouも面白いです。ループされる音は呼吸音と発声音で構成されていると思われるが、それがリバーブ空間に高速で放たれている様な音像であるため手の中から放たれた蝶の様に、発声器官そのものが縦横無尽に空間を動き回っているよう。その音と持続音とキーボードのコンポジション。

BokanowskiのL’Angeサントラhttps://tracelabel.bandcamp.com/album/lange

「ポゼッション」アンジェイ・ズラウスキー


某日のメモから

新文芸坐で二本立て。「アングスト/不安」は主役が友人に似てるように見えたり、音楽、内容も楽しめたが、その次の「ポゼッション」の方がはるかに凄まじかった。

前々から観たかったがなかなか機会がないままだった「ポゼッション」よりも先に、昨年冬エアコンが壊れていることに気が付かずに、自宅へ遊びに来てくれた先輩が持ってきてくれた「シルヴァーグローブ」を見ていたこともあり、この映画について必ず言及されるであろう、アジャーニの怪演(というか頑張り?)だけにとらわれてしまうことなく、また、監督自らが実人生〜離婚〜裏切り、不信や、戦争、思想、について思いを馳せながら、最後の15分だけがファンタジーだという韜晦?は知らず、つまり前知識なしで素直に鑑賞し、同じ俳優が同じ役周りとして出ているジョン・カーペンター「マウスオブマッドネス」との相関から、これは邪神誕生の映画ではないかという気がしたのだった。
「銀行に入れる時はクリーン、出すときは汚れている」と浮浪者(野次馬)に叫ばせていることから、一度(向こう側へ)入れたXが(この世に)出る際、あの様に汚れて(奇怪な姿として)現れるという…

地下鉄でアジャーニが泣き叫ぶシーンから、もう何年も前に観たきりだけど、「灰とダイヤモンド」、もがき、踊る(ようにみえる)シーンばかり繋いでゆけるのではないかとか(いやそれができたとして観たいかという)。

あの地下鉄の反対側では、Zero setが鳴っているなんていう、騒がしい地下鉄の映画なら、観てみたいかな。

「神は疫病である。」
「疫病によって人は神を知る」