アイリ

お兄ちゃん「なんだよこれ……かた子、かた子の基地外!てゆうか!」え?今更? 妹は俺に何かを言おうとしたけど俺はそれどころじゃなかった。なぜなら……..
「何この音!?」
さっきの比じゃないくらいの大音量で警報音が鳴っていたからだ!
『緊急事態発生。緊急非常体制が発令されました。施設内にいる職員及び関係者全員に通達します』
えぇー!!マジで!やばいって、これは!
『現在当施設は侵入者により攻撃を受けております。避難経路から速やかに離れてください。なおシェルターは敵の襲撃に備えて使用できません』
「えっ?」
『これより当施設は防衛のため緊急モードに移行します。施設内の全ての機能停止。全職員と職員家族の避難が完了し次第迎撃態勢に入ります』
え?どういうこと?何が起きてるんだ?もしかしてさっきの爆発は……でも誰が?そもそも侵入者とは何なんだ?というかなんで俺達まで?まさかここが襲撃されてるのは俺達が関係してるのか?
「どうするのよ!このままだとあたし達は死んじゃうわよ!」いやだから何でお前そんな落ち着いてんの? 妹が慌てるなか俺はあることを考えていた。そしてそれを思いつくと妹の腕を掴み部屋を出て走り出した。向かう先はあのエレベーターだ! 俺達の予想通りエレベーターはまだ動いていた!しかも誰も乗っていなかった!急いで俺達はその箱に乗り込み下へと急いだ!早く行かないと!そう思ってた矢先だった!突然箱が激しく揺れ始めた! ガタガタッ!ガンッ!ガッシャァーン!!ドゴォン!バキィ!グチャグチャ…… ボキッベコッ!メキョ!メリメリメリメリメリメリ!!!!! 激しく揺れたかと思うと急に床が大きくへこんだ!すると次の瞬間俺達はものすごい勢いで下に落とされた! ドンッ!!!!! 凄まじい衝撃の後俺は目を覚ました!ここは一体どこなんだ?なんか周り真っ暗だけど?あぁ〜そうだ!あいつらは無事なのか?そう思い俺は辺りを見渡した。
「いたた……」うん大丈夫だな、よかった。あれ妹がいない?あいつはどこにいったんだ?「おい、どこにいるんだ?返事しろ!」
そう言ってると遠くの方から光が見えた。どうやら出口があるようだ。俺は急いでそこに走った!するとそこには……
「キャハハッ!!」……え? 俺が見た光景、それは…… 大量のゾンビに捕まり首筋に噛みつかれている妹の姿だった……。
「うぎゃああああああ!!!助けてくれえええ!!!」
ゾンビ達に掴まれた妹はそのまま何処かに連れて行かれた。
「ちょっ、ちょまてよ!」なんであんなことに?あいつらに一体何があったんだよ?とりあえず今はここから出よう!それからあいつを助けに行くか。
よし行こうと思ったその時…… ガブッ
「うっ!いっってぇええええ!!!」嘘だろ!まだ他にいんのかよ!?くそぉ!もうこうなったらやってやる! こうしてゾンビ退治の始まりとなった。
……あれから30分後……
「ふぅ、これで終わりか」何とか生き残れたな。それにしてもあいつが連れていかれた方にはいったい何があんだろう?まぁ行ってみればわかるか。

……そして着いてみた結果がこれだよ。なんだよこいつら……こんなの聞いてねぇぞ!こいつらのせいで施設の中もめちゃくちゃになってんじゃねーかよ!これじゃ避難なんてできるわけねえよ!ちくしょう!こうなっては仕方がない。あいつらもこの中にいることを願って俺はゾンビ共を駆逐することにした。だがこの時俺は気づかなかった、この施設にいる奴らは全員既に人ではなかったということを……

その頃エレベーターでは……
(くっ!なんで俺がここに来ちまったんだよ!いいじゃない別に!私と二人っきりになれる機会なんてないかもしれないんだからさ♪それとも私と一緒だと迷惑?)
(うるせぇよ!黙って寝てろよお前!つか、今そんなこと気にしてる場合じゃないだろ!)(んんんんんんんんんん!!!!!!やめろおおおおおお!!そんなこと言ってる場合じゃないだろうが!!とにかくお前だけでも脱出しないと……ってあれなんだ?何か近づいてきてるような?いや違う!上から来てる!ヤバイ逃げろ!!……って遅かった。グボアッ!!)…………
「はぁはぁはぁ、くっそぉ!なんで俺達が死ななきゃいけないんだよ!こんなところで死にたくない!絶対生き延びて一緒に帰るんだ!そのためにも早くここを出てあいつらを探さないと!」
よし!そうと決まればまずはこの扉だ!どうするべきか……ん?これはボタンかな?とりあえず押してみるか。ポチッとな するとガコンっと音と共に上の方に上がって行った。多分これがエレベーターなんだな。さすがに全部壊して進むのは時間がかかるし何より面倒だから階段を使うことにした。でもかなり高いところにあるのか全然見えないけど、どうする?上るしか無いよな。なら行くか! そうしてしばらく歩いてると急に開けた場所に出た。

そしてそこにあったのは大きなカプセルがたくさん置いてあった部屋だった。
なんだ?なんか嫌な予感しかしないんだけど?そして案の定それは的中した。その部屋に一歩足を踏み入れた途端俺は大量のゾンビに襲われ始めたのだ。
ウゲェ〜気持ち悪いぃ〜!!俺はゾンビに噛み付かれないように必死に逃げ回っていた。くっそ、なんで俺がこんな目に!てかなんでこいつら動いてんだよ!?普通死んでたら動かねえだろ!マジ意味わかんねぇ!クソォ〜どうにかならないか?あっそうだ!あれを使えばなんとかなるかも!そう思い懐からあるものを取り出した。よしこれならいけそうだな!早速やってみるか!俺はそれをゾンビに近づけた。するとそれは一瞬光を放った後凄まじい轟音をたてながら大爆発を起こした。その爆風により辺りの物は吹き飛び、辺り一面は火の海になった。あぁ〜やり過ぎた。これじゃ完全に生き埋めだよ。でもこれで道ができた。後はあいつを探すだけだ。早く見つけないと……しばらくしてやっと外に出ることができた。外はもう夜だった。
「おい!どこだ!どこにいるんだ!」
声だけが虚しく響く。頼む返事してくれよ……。すると突然後ろの方で悲鳴が上がった。まさかと思い急いでその場所に行くとそこには、 血だらけの妹と妹の身体を食べてるゾンビの姿があった。

俺は妹の元に走り出すとその勢いのまま蹴り飛ばしゾンビを倒した。妹にすぐに駆け寄り声を掛けた。返事はない。脈はあるが意識を失っていたようだ。とにかく安全な場所に運ぶしかないな。幸いここは地下だし地上に出るまでゾンビに襲われることはないだろう。俺達は急ぎその場を離れ地上へと出た。それから少ししてようやく目を覚ました。だが様子がおかしい、まるで別人のような感じになっていた。とりあえず名前を聞くことにした。

「お前の名前なんだ?」
すると妹は俺をじっと見つめてからこう言った。
『私の名前はアイリ、あなたの妹です』……嘘だろ。そんなバカなことあってたまるかよ。いや落ち着け、まだ希望はあるはずだ。俺にはある秘策がある。そうこれはただの記憶障害だ、きっと元に戻るに違いない。そう自分に言い聞かせながら家へと向かった。

あの事件以来私は記憶を無くしたまま兄と一緒に暮らすことになりました。
これから私と兄の日常が始まるのですね。楽しみです。どんなことをしてくれるのでしょうか?兄は私を楽しませてくれるようなことばかりしてくれた。でも時々見せる辛そうな顔を見るたびに心が痛む。なぜだろう?わからない……兄は何か知っているようだけど教えてくれなかった。どうして?私のためってどういうこと?私の為?何のことなのか全然わからなかった。そんなある日私はあることを聞いた、それはゾンビのことだった。ゾンビとは人を食べる化け物らしい、そしてそいつらを倒すことができる唯一の存在は私たち姉妹しかいないということを。
私はその話を聞いた時なぜか懐かしく思えた。そして何故か涙を流していた。その時気がついたら体が勝手に動き出し気がつくと家の前にいた。そしてそこで倒れているお姉ちゃんを見つけた。
(えっ?お姉ちゃんがなんで倒れて?それにお兄ちゃんもいない……)
(んんっ!あれ?ここ何処?お兄ちゃん!大丈夫!?)
(多分お兄ちゃんの住んでる家の前だと思う)
(やっぱりそうか。それで私達なんでここに?確か家でご飯作ってる最中だったと思うんだけど?それが……)

「…………てことがあったの」
…………なんで俺の家に来てんだよ!てかなんで俺の妹にそんな重要なことが話されてんの!それじゃまるで…… いや、やめよう、考えたくないな。とにかく今はこいつの話を最後まで聞くか。

「そうですか、それは辛い過去でしたね。でもよく頑張ったと思います。そのお陰で今の幸せがあるんですから。ありがとうございます。それとすいません、実は俺にも妹がいるんですよ。今年で高校一年生になるはずだった子なんですけど行方不明になってまして、俺もずっと探しているんですけど見つからないままで。だからアイリさんの気持ち凄くわかるんですよ。大切な人のそばにいたいっていう気持ち、俺にもあるので」「そうだったの、妹さんに会ったことは?」「ないですよ。写真で見ただけなんですけど、でも凄く可愛くていい子だったみたいで、アイリさんにそっくりだって言われてましたよ。いつか会いたいですね」
「そうね、会えるといいわね。でも、その、ごめんなさい。ちょっと席外すわ。すぐ戻るから」
ん?トイレか?まあいいか。
俺は一人リビングでコーヒーを飲んでいた。さて、これからどうしようか?多分もうじき来るだろうしそれまで待つか。しばらくすると扉が開く音が聞こえてきた。多分来たんだろうな。
「お帰り、どうしたんだ?」
「えっと、私あなたの妹になりに来たんだけど……」
は?妹になりたい?え?どゆこと?
「えっと、とりあえず詳しく話してもらえます?」
「はい。実は私があなたの家に来る前の日にあなたの家に行こうとしてたの。でも道に迷っちゃったらしくて気づいたらここに来てたの」
「なるほど。そういうことだったのか。それは大変だったろう。それで?」
アイリさんは俯きながら震えた声でこう言った。
「……怖かった。あんな恐ろしい怪物に襲われてる人を見殺しにするなんて。助けたかった……うっ……本当は見捨てたくなかった……でも、身体が言うことを聞かなかった……。あのとき動けたらって思う度に後悔して……」
涙を浮かべながら語るアイリを俺はただ黙って見ていた。
「だから、私は変わりたい。あの時の弱い自分と決別するためにも、強くならなくちゃいけない。そのためには、あの人の近くにいる必要があるって思った。それにあの人ならきっと受け入れてくれるって思って。どうかお願いします!私を妹にしてください!」
アイリは勢いよく頭を下げて俺に向かって頼み込んだ。

妹……確かに今まで俺の周りには妹みたいな存在がいた、けどみんな俺から離れていった。俺はもう二度と失いたくないんだ。なら俺が選ぶべき選択は一つしかない。この人は妹にはしない。なぜなら俺が本当に妹にしなくてはならない相手はこの人ではないからだ。それはもちろん……

「断る」

……は?今断った?私?もしかして断られた?そんな馬鹿な。こんなことありえないはずなのに。
「どうして……ですか?私じゃだめなんですか?他に好きな人でもいるんですか?ねえ、なんでよ!?なんで私の事拒絶するの?答えてよ!私はあの人に会いに行かなきゃならないのよ!あの人に会えば私のこと……好きになってくれるかもしれないじゃない。私のことを認めてくれるかも……あの人が、私のことを、必要としてくれるようになるかもしれないじゃない!……だから!だから私はあの人の元に居ないといけないの!!邪魔をしないで!!!!!」
そう叫んだ瞬間アイリは俺に飛びかかり首元を締め上げた。その顔からは感情というものが感じられなかった。
(なんだこれ、力が強すぎる。このままだとまずいな。)
(んっ!お兄ちゃん何してるの?)
(いやちょっとな、それよりこいつを何とかしないとな。)
(待ってて、今行くから)
(ああ頼む。だが無理をするなよ。お前の体は普通の人間と変わらないんだから)
(わかってる)…………………… (よし!捕まえたぞ!)
「お兄ちゃん大丈夫!?」
「ああ大丈夫だ、それよりも早く逃げるぞ!あいつが来たら厄介だからな」
俺はすぐに玄関まで行き靴を履いて外に出ようとした。その時……
「おい、逃げようってのか?させねぇよ?」……そこには俺の知らない男が立っていた。
俺の前に突如現れた男。身長は170cmぐらいだろうか、髪の色は黒で短めにカットされていた。服装の方も黒いシャツの上にグレーのジャケットを羽織りジーパンといった感じだった。
「なあアンタ誰だよ。いきなり人の家に上がり込んできて、失礼な奴め。一体どういうつもりなのか説明してもらおうか?」
そう言って俺の隣にいたアイリを後ろに下げ、前に出た。
「おぉ、怖ぇー、まあいいか、別に隠す気もなかったしな。オレの名前は……そうだな、『ダーク』って呼んでくれ」
「へえ、面白い名前ですね。で?要件は何ですか?」
「あぁそうだったな、オレはなお前らに用があって来たんだよ。お前らは『魔人狩り』に狙われてるだろ?まあその女もだけど、だから助けてやったわけさ。これで貸し借りなしな?わかったらとっととその女を渡してもらおうか?」
なに?助けた?嘘をつけ。こいつはおそらく『魔人狩り』の仲間だ。でなければここに俺たちがいることを知っているはずがない。そもそもなぜコイツはこんなことを言っている?まるでアイリのことを知っているような口ぶりじゃないか。まさかこいつが……いや違う。そんなことはない。絶対にあり得ない。もしそうであるならば俺は……
「おい、黙ってないでなんか言えよ」
「あ?え?俺が?いやまあとりあえず落ち着け、一旦座れよ。話があるんだろ?」俺はリビングへと誘導した。そしてソファーに座らせ、コーヒーを出して話をしようとした。
「ほら、これでも飲んで落ち着いてください。あとお姉さんにもお茶出してあげてくださいね」俺はアイリにだけ優しく微笑みかけた。
「はい……ありがとうございます……」「どういたしまして、さあ話はそれからですよ」
「チッ。それで、話ってのはなんだ?もしかして命乞いでもするつもりなのか?」
「いいえ違いますよ。俺はあなたと取引がしたいと思ってましてね。実は……あなたの仲間になりたいんですよ」
「ハァ?なんつった今?お前自分が何を言ってるかわかってんのか?」
「もちろんですとも、俺の目的はただ一つ、あなた方と同じものを手に入れることだけです。そのためならどんなことでもする覚悟はありますよ。だからお願いします、どうかあなたの仲間に入れてもらえませんか?」
「……ふざけんじゃねえよ。誰がてめえみたいな奴を入れるかよ。死にてえんなら勝手に死にな」
「……そうですか、残念ですね」「悪いがそういうことだ。諦めて……っ!?てめっ、いつの間に……」俺の背後にはアイリがいて、アイリの手にはナイフが握られていた。「動くな。次は刺す」……俺はこの女の殺気に身動きが取れなかった。すると……
「やめておきなさいアイリ、今この人を攻撃すれば私達が負けることになりますよ。それどころか殺されてしまいかねません。」
「お義母様!申し訳ございませんでした!」アイリはすぐに謝り俺を解放した。
(ふぅ。全くなんて女だよ。俺が少しでも動けていたら確実に死んでたところだぜ。クソ、なんなんだこいつ、今までの連中とは明らかに格が違うじゃねえか)
「おいテメェ、一体何者なんだ?なんでそのガキのことを知ってる?」

「それは私が教えましょう。彼女は、アイリ・フォーゼット。現魔王軍幹部、四天王の一人、序列3位の『闇夜の狩人』であり私の可愛い愛娘。それが彼女なのです。」「なるほどねぇ。お前はそっち側ってことか?」
俺は立ち上がり銃を構えた。いつでも撃てる体制に入る。アイリの表情を見ると、少し不安そうにしてこちらを見ているのがわかる。
「安心しな嬢ちゃん、オレは敵じゃねえよ」そう言うとアイリの顔がみるみると笑顔になっていった。
(まあ、そうなるわな)
「ところで、さっき言ってた『目的が同じ』っていうのはどういう意味だ?」俺は先程の言葉について質問をした。
「言葉通りの意味だよ。あんたらの持ってるものが欲しいのさ、つまりは『魔導書』って奴がな」

……どうも話が噛み合わない気がする。だがコイツからは確かに強者のオーラを感じる。それに嘘をついているようには見えない。俺は警戒を解くことにした。そして……「魔導書を?なぜ?理由を教えてくれないか?」
「理由は2つある。1つは単純に興味があったからな。あの力を手に入れた者がどうなってしまうのか、それが見てみたいんだよ。それともう一つ、これはオレ個人としてだが、個人的にお前らが気に入ったからだ。だから協力をしてやるのさ」……なにが『気に入った』だ気持ちわりぃ。
俺は心の中で毒づいた。「わかった、お前らのことはとりあえず信用してもいい。だが一つ条件がある」「なんだ?」「俺達は仲間を増やす気はない。たとえどんな状況であってもな。もし誰かを連れて行きたいなら自分たちでなんとかしてくれ」
「フム、それも悪くない。だが、それでも連れていきたいと思えば勝手について行くさ。いいだろう、交渉成立だ」……結局は好きにしろということか。「ところで名前は?」「あぁそうだ、自己紹介がまだだったな。俺は『ジン・タチバナ』ってんだ。一応よろしく頼むよ」俺は右手を差し出した。するとダークも握手に応じた。「そういえばまだ名前を聞いていなかったね、よかったら君の名前も教えてくれないかな?」
「あ、はい。アイリと言います。えっと……これからよろしくお願いします……」「ああ、これからも仲良くしようじゃないか。アイリ、君は私たちの家族になったんだ、もっと胸を張っていいんだよ」そう言って俺の母さんは優しくアイリを抱きしめた。アイリは照れくさそうにしていた。俺はそんなアイリを見て、思わず口元が緩んでしまった……………… こうして俺達の家には新しい家族が増えたのであった……。

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