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ニコがマンチェスターをすみかとし、地元のポストパンク・バンド=ブルー・オーキッズをバックに従えていたと思しき時代(クレジットがどこにもないので不明)の82年デンマーク・ライヴ盤。
いつになくソリッドな演奏に(ニコが残す数多くのライヴ録音の中でも格別)、あの漆のように黒く深い、永劫の闇のなかから拾われてきたような歌声がそよそよと立ち現われ、異様な緊張と不気味な美しさを醸し出す。いまにも消え入りそうなロウソクの火のようにはかなく、底にはぼろぼろの危うさを持つ率直な美しさ。
ニコがハーモニウムの前に座り、”Janitor Of Lunacy”を歌い始める瞬間の魔力。その鈍く輝く持続低音の閃光はヨーロッパの深き哀愁であり、何かの凶変が今にも突発するのではないかという不吉な予感とともに、まるでひとりぼっちの少女の孤独のように愛おしい。