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キャバレー・ヴォルテール26年ぶりの新作。とはいえ、その間もオリジナルメンバーのリチャード・H・カークは多くの名義でさまざまな実験を試みる作品をリリースし続けているので、ごぶさた感はあまりないが……キャブスとなれば話は別である。
どっしりと打ちこまれたチープで硬質なリズムに、穏やかでない電子ノイズやワウを効かせたファンクなうわもの、さらにハウス〜テクノにエスノな風味も乗っかり、あちこちに怒号のようなボイスサンプルが飛び交う。ああ、これはまさしく攻めるキャブスである。
蛇行することなくまっすぐ反復。鈍くもあり鋭くもあり、新しくも古くもなく、絶妙な塩梅でびっくりするほどキャブスに徹するリチャードの生真面目さというか、潔さというか、肌に染みついた粋でいなせなインダストリアル気質は、アルバムを聴き進めるごとにヴォルテージを上げていき、ラストのマーヴィン・ゲイに捧げたと思しき金属エレクトロ・ファンク “What’s Goin’ On” でざらついた色気とスリルを残したまま幕を閉じる。
ここにクリス・ワトソンのテープコラージュやステファン・マリンダーのベースとボーカルを求めるのは野暮というもの。しっかりと攻めのピントを合わせてきたリチャード・H・カークによるひとりキャブスに、両手の裏まで使って拍手を贈りたい。